有名な症例P.G.は、前頭葉の認知機能について深い洞察をもたらしたことは広く知られている。最近、深刻な脳障害から著しい回復を示した注目すべき症例M.S.につて報告された(以下のURL参照)。M.S.はイスラエル人で、大学院博士課程学生の29歳のときテロリストの攻撃により頭部に障害を受けた悲惨な事例である。
M.S.の症例では、P.G.の場合と似たように、前頭前野の関与する情動、気分、人間関係などの社会性の障害が認められた。これだけでは悲惨な事故であったが、驚くことに心理療法やリハビリテーション処置によって事件から7年が経過した時点で、M.Sの前頭前野のはたらきは顕著な回復を示した。
つまり症例M.S.は、認知機能や情動、気分などの高次機能が、いったん障害を受けた後に脳のトレーニングにより回復することを示している。この症例は、神経可塑性と脳の高次機能の維持・回復の間に相関があることを支持する有力な証拠を提供するであろう。さらなる、追究が期待される。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21667397
2011年9月3日土曜日
2011年6月25日土曜日
自閉症 ― 壊れたミラーニューロンが原因か?
しばらく前になるが、自閉症の病態について論争が起こっていることを示す記事があった。
http://scienceblogs.com/neurophilosophy/2011/03/ramachandran_broken_mirror.php
神経科学の立場からは興味深い問題であり、予防のための診断さらには治療を模索するうえで重要な課題なので、その成り行きが注目される。
「ミラーニューロンとは?」で、担当科目「薬科学」の学生に演習課題を提示したが、学生はどの辺りまで調査してくるであろう?
http://scienceblogs.com/neurophilosophy/2011/03/ramachandran_broken_mirror.php
神経科学の立場からは興味深い問題であり、予防のための診断さらには治療を模索するうえで重要な課題なので、その成り行きが注目される。
「ミラーニューロンとは?」で、担当科目「薬科学」の学生に演習課題を提示したが、学生はどの辺りまで調査してくるであろう?
2011年3月10日木曜日
マウスも唄うか?
マウスも唄うらしいが、残念ながらヒトの可聴領域から2・3オクターブはずれていて、われわれには聞こえないようである。
彼らの唄う能力は完全に生得的なものなのか、あるいはわれわれの場合と同じように親や環境から学習して形成されるものなのか?
この問題を追及した二つの論文が報告され、以下のように両方は異なる結論に到達している。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017460
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017721
彼らの唄う能力は完全に生得的なものなのか、あるいはわれわれの場合と同じように親や環境から学習して形成されるものなのか?
この問題を追及した二つの論文が報告され、以下のように両方は異なる結論に到達している。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017460
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017721
ラベル:
ボーカル(歌)の学習
2011年2月22日火曜日
脳には言語のための神経回路は複数あるか?
脳には言語を習得するための神経回路は、元来は一つしかないのであろうか? 第二外国語を読み書き話すことに関与する脳の神経解剖は第一言語を処理する部位と違うことが明らかにされているようである。
第二外国語に習熟すると、尾状核の一部の活動が高まるようであり、この活動の強度は言語の習熟度と相関するらしい。つまり、別の言語が上手になると、別の神経回路の活動が強化されるらしい。以下のTanらの最近の論文によれば、尾状核-紡錘状回回路(caudate–fusiform circuit )の活性化の程度から、第二外国語の習熟度を予測できるということである。
Tan LH, Chen L, Yip V, Chan AH, Yang J, Gao JH, & Siok WT (2011). Activity levels in the left hemisphere caudate-fusiform circuit predict how well a second language will be learned. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 108 (6), 2540-4 PMID: 21262807
2011年2月19日土曜日
小脳のない少年
驚くべき記事を目にしました。
脳性麻痺の原因を調べるためにMRI検査をしたところ、小脳と橋の一部がないことが1歳のときに発見され、現在3歳の少年Chase Brittonについてのブログとニュースです。信じがたいミステリーのようですが、脳の可塑性が働いているのか全く不明のようです:
http://neuroskeptic.blogspot.com/2011/02/boy-without-cerebellumhas-no-cerebellum.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+Neuroskeptic+(Neuroskeptic)
元のニュース・サイトはこちら:
http://www.aolnews.com/2011/02/12/chase-britton-boy-without-a-cerebellum-baffles-doctors/
脳性麻痺の原因を調べるためにMRI検査をしたところ、小脳と橋の一部がないことが1歳のときに発見され、現在3歳の少年Chase Brittonについてのブログとニュースです。信じがたいミステリーのようですが、脳の可塑性が働いているのか全く不明のようです:
http://neuroskeptic.blogspot.com/2011/02/boy-without-cerebellumhas-no-cerebellum.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+Neuroskeptic+(Neuroskeptic)
元のニュース・サイトはこちら:
http://www.aolnews.com/2011/02/12/chase-britton-boy-without-a-cerebellum-baffles-doctors/
2011年2月10日木曜日
奇術の脳科学
四国の薬学部で教員やっています。 脳のはたらきを支える脳内シナプス機構、とくにGABAシナプスが働く仕組みについて研究中。 日常生活に関する科学の情報、とくに脳や薬に関心があります。政治については”疎いものでして”!
視覚に関する脳科学者が著した以下の近刊本に興味がひかれます。"Sleights of Mind" SL Macknik & S Martinez-Conde著 http://www.sleightsofmind.com/
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