有名な症例P.G.は、前頭葉の認知機能について深い洞察をもたらしたことは広く知られている。最近、深刻な脳障害から著しい回復を示した注目すべき症例M.S.につて報告された(以下のURL参照)。M.S.はイスラエル人で、大学院博士課程学生の29歳のときテロリストの攻撃により頭部に障害を受けた悲惨な事例である。
M.S.の症例では、P.G.の場合と似たように、前頭前野の関与する情動、気分、人間関係などの社会性の障害が認められた。これだけでは悲惨な事故であったが、驚くことに心理療法やリハビリテーション処置によって事件から7年が経過した時点で、M.Sの前頭前野のはたらきは顕著な回復を示した。
つまり症例M.S.は、認知機能や情動、気分などの高次機能が、いったん障害を受けた後に脳のトレーニングにより回復することを示している。この症例は、神経可塑性と脳の高次機能の維持・回復の間に相関があることを支持する有力な証拠を提供するであろう。さらなる、追究が期待される。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21667397