過去300万年にわたって、人類のより大きな脳への進化は、私たちが考え、問題を解決し、文明を発展させるために重要な役割を担ってきた。しかし、人類の脳はどのように拡大してきたのであろうか? その背景となっている遺伝的変化は知られていなかったが、Cellの最新号(5月31日)で二つの研究チームが、遺伝子ファミリーNOTCH2NLがヒト特異的な大脳皮質の発達に重要な役割を果たしていて、私たちの「大きな脳」進化に推進力となっていることを特定した。NOTCH2NLは、大脳皮質の幹細胞集団を増大するように作用して、その結果より多くの皮質ニューロンの産生を可能にしているらしい。
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またこの遺伝子は、オランウータンにはなく、ヒトに最も近縁なゴリラやチンパンジーでは短縮された不活性型しか存在しないので、NOTCH2NLはヒトに固有の遺伝子のようである。しかし驚くべきは、胎児発達の制御には多くのシグナル系が関与していて、それらは様々な動物種の間でよく保存されており、その中でもNotch情報伝達系は最も古くから働いている制御系であることとだ。では、Notchのように普遍的なシグナル系が、ヒト脳の進化をどのように達成してきたのだろうか? この問への解答として、進化史上きわめて最近に、ヒトNotchシグナル系にはNOTCH2NLへの遺伝子変異が起こり、これをを通して予想をはるかに超えた革新となって、人類は「大きな脳」を獲得した可能性を想定できるようである。人類の脳の進化は、まさに「温故知新の遺伝的様式」がもたらした成果だった……