記憶とこころ(脳のしくみ-Paper Reviews) 自適其適 enjoy-it-as-like-it
2018年8月3日金曜日
脳損傷の拡大を阻止するミクログリアの新たなメカニズム
2018年7月13日金曜日
『もうひとつの脳』の書評が「今週の本棚」に掲載
毎日新聞「今週の本棚」に『もうひとつの脳』の書評が掲載されました。
こちらのサイトより(→https://allreviews.jp/review/2444 https://twitter.com/shiro_konishi/status/1016130893906243584)
2018年6月2日土曜日
ヒト大脳皮質の拡大を制御する遺伝子は何か?
過去300万年にわたって、人類のより大きな脳への進化は、私たちが考え、問題を解決し、文明を発展させるために重要な役割を担ってきた。しかし、人類の脳はどのように拡大してきたのであろうか? その背景となっている遺伝的変化は知られていなかったが、Cellの最新号(5月31日)で二つの研究チームが、遺伝子ファミリーNOTCH2NLがヒト特異的な大脳皮質の発達に重要な役割を果たしていて、私たちの「大きな脳」進化に推進力となっていることを特定した。NOTCH2NLは、大脳皮質の幹細胞集団を増大するように作用して、その結果より多くの皮質ニューロンの産生を可能にしているらしい。
出典はこちら→https://goo.gl/JF28uA
(原著二篇のPDFはこちら→https://goo.gl/Fwp6CK https://goo.gl/e3KTou)
またこの遺伝子は、オランウータンにはなく、ヒトに最も近縁なゴリラやチンパンジーでは短縮された不活性型しか存在しないので、NOTCH2NLはヒトに固有の遺伝子のようである。しかし驚くべきは、胎児発達の制御には多くのシグナル系が関与していて、それらは様々な動物種の間でよく保存されており、その中でもNotch情報伝達系は最も古くから働いている制御系であることとだ。では、Notchのように普遍的なシグナル系が、ヒト脳の進化をどのように達成してきたのだろうか? この問への解答として、進化史上きわめて最近に、ヒトNotchシグナル系にはNOTCH2NLへの遺伝子変異が起こり、これをを通して予想をはるかに超えた革新となって、人類は「大きな脳」を獲得した可能性を想定できるようである。人類の脳の進化は、まさに「温故知新の遺伝的様式」がもたらした成果だった……
2018年5月7日月曜日
『もうひとつの脳』あとがき
2018年4月19日木曜日
『もうひとつの脳』が出版されました!
新刊『もうひとつの脳 ―― ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」』を上梓しました(以下のURL参照)。
本書は、R・ダグラス・フィールズ著 ”The Other Brain: The Scientific and Medical Breakthroughs That Will Heal Our Brains and Revolutionize Our Health" を翻訳したもので、「脳神経系におけるグリア細胞の役割」に鮮明なスポットをあて、 新たな視点から「脳のしくみ」を理解しようとする意欲的な著作です。
グリア研究に尽力してきた著名な神経科学者たちのユニークな逸話や「グリア細胞の謎」に迫る物語に満ちています。その中の白眉は、「アインシュタインの脳」を解剖したマリアン・ダイアモンドの発見である。彼女の脳解剖所見によれば、「アインシュタインの天才が、ニューロンではなくグリアに支えられていた」ことが強く示唆されている。この事実だけでも、脳の研究者はもちろんのこと、一般読者をも大いに魅了して、「グリアとはなにか?」への想像を強くかきたてられるであろう。
神経科学の父祖と尊敬されるラモニ・カハールが提唱した「ニューロン説」は、20世紀はじめから100年以上にわたって神経科学者の営為を支える根幹としての役割を担ってきました。これまで神経科学の主流であり続けた考えは「ニューロン中心主義」、つまり脳の主役はニューロンであるという思想です。それでは、脳細胞の八割以上を占めるグリア細胞の役割は何か? この大きな疑問に取り組んでいるのが本書の主題である。フィールズの到達した結論は、重要な局面で「グリアはニューロンを制御する」、あるいは少なくとも「ニューロン・グリア両立主義」を妥当としている。
人間の精神・心を支えているのは、これまで推論されてきた「ニューロンの脳」だけでなく、グリアによる「もうひとつの脳」が不可欠の役割を果たしていると洞察されている。つまり、脳内の広範で多くの部位をつなぐニューロン集団を、同期して活動させるための統合装置としてグリア・ネットワークが働いているという。このような視点から脳機能を追究しようと試みることは、脳の働きに関する基礎的な理解を深めるだけでなく、脳神経疾患の治療に向けた応用の地平を拓くことにつながるであろう。
https://goo.gl/awpFE https://goo.gl/28J3bh
本書は、R・ダグラス・フィールズ著 ”The Other Brain: The Scientific and Medical Breakthroughs That Will Heal Our Brains and Revolutionize Our Health" を翻訳したもので、「脳神経系におけるグリア細胞の役割」に鮮明なスポットをあて、 新たな視点から「脳のしくみ」を理解しようとする意欲的な著作です。
グリア研究に尽力してきた著名な神経科学者たちのユニークな逸話や「グリア細胞の謎」に迫る物語に満ちています。その中の白眉は、「アインシュタインの脳」を解剖したマリアン・ダイアモンドの発見である。彼女の脳解剖所見によれば、「アインシュタインの天才が、ニューロンではなくグリアに支えられていた」ことが強く示唆されている。この事実だけでも、脳の研究者はもちろんのこと、一般読者をも大いに魅了して、「グリアとはなにか?」への想像を強くかきたてられるであろう。
神経科学の父祖と尊敬されるラモニ・カハールが提唱した「ニューロン説」は、20世紀はじめから100年以上にわたって神経科学者の営為を支える根幹としての役割を担ってきました。これまで神経科学の主流であり続けた考えは「ニューロン中心主義」、つまり脳の主役はニューロンであるという思想です。それでは、脳細胞の八割以上を占めるグリア細胞の役割は何か? この大きな疑問に取り組んでいるのが本書の主題である。フィールズの到達した結論は、重要な局面で「グリアはニューロンを制御する」、あるいは少なくとも「ニューロン・グリア両立主義」を妥当としている。
人間の精神・心を支えているのは、これまで推論されてきた「ニューロンの脳」だけでなく、グリアによる「もうひとつの脳」が不可欠の役割を果たしていると洞察されている。つまり、脳内の広範で多くの部位をつなぐニューロン集団を、同期して活動させるための統合装置としてグリア・ネットワークが働いているという。このような視点から脳機能を追究しようと試みることは、脳の働きに関する基礎的な理解を深めるだけでなく、脳神経疾患の治療に向けた応用の地平を拓くことにつながるであろう。
https://goo.gl/awpFE https://goo.gl/28J3bh
2018年4月14日土曜日
ヒト海馬のニューロン新生は高齢者でも維持される!
げっ歯類や霊長類の脳におけるニューロン新生は加齢にともなって低下すると、これまで考えられていた。しかし、脳バンクに保存された14歳から79歳の正常人脳試料を調査した最新の研究から、すべての年齢範囲で神経前駆細胞、未成熟神経細胞、グリア、顆粒細胞の数はほとんど同じであることが見出された。つまり、成熟した脳(成体脳) の海馬におけるニューロン新生の活性は、若い脳とほとんど同じ程度に維持されていることが明らかにされた。ただ、高齢者ではシナプス可塑性(シナプス新生・結合能)は若年者に比べて低下しているらしい。いずれにしても、高齢者には励みになる結果であり、脳や体のエクササイズあるいは別の方法でシナプス結合の数を増やすことができれば、認知機能を維持することも十分に可能であろう。
2014年6月16日月曜日
神経科学における最強のデュオ
神経科学の研究における最強のデュオ(二人組)は、言わずと知れたHubel & Wieselの右にでるものはありません。
最近、トルステン・ウィゼルさんのデビット・ヒューベルさんへのtributeが、Journal of PhysiologyのPhysiology Newsの46・47ページに掲載されました。これまでの神経科学研究における史上最強のペアができあがる契機も偶然の要素が支配したことが語られていて、強い絆が結ばれる背景へ思いを巡らされる……ヒューベルさんが日本語で講義をするまでになったエピソードも紹介されていて興味が尽きない。
こちら(46頁へ)→ https://https://goo.gl/9aH4bT
最近、トルステン・ウィゼルさんのデビット・ヒューベルさんへのtributeが、Journal of PhysiologyのPhysiology Newsの46・47ページに掲載されました。これまでの神経科学研究における史上最強のペアができあがる契機も偶然の要素が支配したことが語られていて、強い絆が結ばれる背景へ思いを巡らされる……ヒューベルさんが日本語で講義をするまでになったエピソードも紹介されていて興味が尽きない。
こちら(46頁へ)→ https://https://goo.gl/9aH4bT
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